MENUCLOSE
1_ja
お知らせ・イベント
ホーム > お知らせ・イベント > 1年のリズムを刻む概年遺伝子を発見!【YLC】【中山友哉】

1年のリズムを刻む概年遺伝子を発見!【YLC】【中山友哉】

2024.01.10
お知らせ
#研究推進 #若手育成

 私たちのからだの一日のリズムの多くが体内時計によって制御されるように、一部の生物は約一年のリズムを刻む体内時計である「概年時計」を用いることで、季節の変化にうまく適応していることが知られています。この概年時計によって駆動される内因性のリズムは「概年リズム」と呼ばれ、繁殖活動や渡り、冬眠など、季節の変化に合わせてそのタイミングを制御するのに重要な役割を持ちます。日の長さや温度など環境条件を感知する仕組みにくわえ、そうした条件に左右されない、からだの中で刻まれる”なにか”を時計代わりにする仕組みがあると考えられていました。しかし、特に後者の仕組みについては全く手がかりがない状態でした。

「概年リズムを調べた論文はこれまでありましたが、その仕組みに切り込むところは今まで誰もやってこなかったところです。今回、関連する遺伝子 を見つけることができたのはひとつの大きな成果だと思います」

【プレスリリース】1年のリズムを刻む概年遺伝子を発見~繁殖や渡り、冬眠などのタイミングをはかる体内時計の謎に迫る

中山友哉
[中山 友哉 大学院生命農学研究科/高等研究院 特任助教]

 年単位の長い研究期間を必要とし、さらには事前情報も少ない。そんな中でも研究を始めたきっかけについて、中山さんは以下のように話します。

「もともと私たちのグループでは動物の季節適応について研究をしていたのですが、概年時計の分子機構は研究分野の中でも大きな謎の一つでした。この謎に挑むため、私たちは2015年頃からこの研究プロジェクトを始めました」

研究手法の王道としては環境条件が変わらない屋内でその生物の遺伝子を確かめる方法がありますが、中山さんのグループは違いました。

「私たちは自然条件下で飼育されたメダカの体内で何が起こっているかを調べることから始めました。ずっと同じ環境で飼うのは難しく、また、事前情報が全くない中で当たりをつけるために、まずは自然で起こっていることを理解する必要があると考えました」

メダカの屋外飼育
[自然条件下で飼育されているメダカのようす]

 2年間にわたり、2週間に1回のサンプリングと解析を続けました。ときには、24時間、徹夜のサンプリングもあったそうです。

「こつこつやるのは好きですね。大変でやりたがる人がいないからこそ、それをやりとげることで新しい発見につながったりもします」

こうして、生殖腺の肥大リズムや、脳内での細胞分裂や細胞分化に関わる遺伝子をはじめとし、概年リズムを示す因子を特定することに成功しました。

「ターゲットとなる遺伝子が100個ほどに絞り込めたので、その中でもコアとなる遺伝子を探りたいです。今後は最先端の技術も活用しつつ、概年リズムが生み出される仕組みを明らかにしたいです」

研究詳細は名古屋大学のプレスリリースをぜひご覧ください!

(文・綾塚達郎)