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【専任教員紹介】菅野里美 / 福田努 / 亀田真澄 / 河江肖剰【2025年度】

2026.03.24

 学術の振興、卓越した研究への支援、次世代研究者の育成、そして国際的な研究交流を通じて名古屋大学における知の中枢を担う高等研究院。名古屋大学の最も重要な学術講義として位置づけられる「名古屋大学レクチャー」や、名古屋大学の最先端研究に触れる機会を提供し、透明性の高い研究環境を示す討論会「卓越先端次世代研究シンポジウム」など数々の施策を打ちつつ、大学内外に開かれた交流拠点としての役割を担っている。こうした活動において欠かせないのが専任教員の存在だ。自らも最先端の研究を行い、高等研究院の主要な運営業務に携わる4名を紹介する。

(インタビュアー:上口遥 / 文:綾塚達郎, 取材日:2025年12月9日)

菅野里美 Satomi KANNO

高等研究院(生命系担当) 専任教員/准教授
専門:植物生理学

 植物の栄養元素吸収メカニズムについて、遺伝子やたんぱく質といった細胞レベルの解析から、新しいイメージング技術の開発まで幅広く研究を行う。栄養元素の同位体を植物に取り込ませ、そこから放射されるベータ線を可視光として撮像する方法を開発することで、吸収動態を生きたまま解析することに成功にした。植物生理の新たな謎に迫るとともに、肥料利用効率の向上といった応用も期待される。また、学際研究にも携わっており、リン酸を取り込むタンパク質の種類を細菌や古細菌を含む様々な生物間で比較し、生物と環境の共進化の研究も進めている。

―専任教員による運営の仕組みについて教えてください。 

 専任教員はそれぞれ、人文社会系、理工系、生命系というくくりで各自の専門分野を持っています。たとえば名古屋大学レクチャーや卓越先端次世代研究シンポジウムといった大きな講演会では、専任教員の専門を活かして講演者の選定や内容の交渉を行います。毎年違う分野のイベントを専任教員が持ち回りで分担していて、私は生命系を担当していますが、2023年度の名古屋大学レクチャーでは、2004年ノーベル化学賞受賞者のAaron Ciechanover(アーロン・チカノーバ)教授をお招きして、新時代の医療についてお話してもらいました。 

―担当業務について教えてください。 

 主な業務の一つに、若手研究者育成を目的としたフライブルク大学との研究交流プログラムの運営があります。フライブルク大学と名古屋大学それぞれが2名ずつ若手研究者を選出して、相互に1か月間、渡航、滞在します。その際の渡航費と滞在費の資金援助を行います。ポイントは、1か月の滞在を2年間にわたり2回行うことです。1年目に1か月、2年目にまた1か月、といった具合ですね。

―年度をまたいでの連続した支援制度はユニークですね。このプログラムの魅力について教えてください。

 1回あたりの滞在期間は短くても、また来年も行くとなれば関係性が長く続きます。たとえばそれが共同研究へ発展するなどが一つの理想形ですね。また、私の経験からも、実際の実験や作業の現場を国内外問わずたくさん見ておくのはとても大事だと考えています。裏の動きを知って論文を読むのと知らずに読むのとでは全然意味合いが違ってくる。その目を鍛えるためにも、現地に行くことにはとても大きな意味があると思います。

―その他の業務についても教えてください。

 様々な業務がありますが、全体的に新しい業務の立上げに関わることが不思議と多いです()。フライブルク大学との研究交流プログラムもそうですし、他にも若手研究者の交流を目的としたイベント、「新春高等研究院大交流会」も昨年度立ち上げました。分野が違うとふだんなかなか話す機会のない若手研究者が、年明けに会って様々な議論と交流を行う場です。その他には、若手研究者の子育て支援として、子どものお世話をしながら学内で仕事ができるキッズルームの運営も行っています。また、私も子育てしながら研究をしているのですが、安心した環境づくりのためにも、そうした皆さんと何気ないお話をすることも実はとても大切なことだと思っています。

福田 努 Tsutomu FUKUDA

高等研究院(理工系担当) 専任教員/特任講師
専門:素粒子物理学

 1ミクロン以下の世界最高精度で素粒子を記録する原子核乾板を駆使し、素粒子ニュートリノと宇宙の起源について研究を行っている。未知のニュートリノ反応やニュートリノの新種発見を目指した国際共同研究プロジェクト「Neutrino Interaction research with Nuclear Emulsion and J-PARC Accelerator(通称NINJA)」の代表を務める。茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設「J-PARC」で人工的にニュートリノビームを生成し、原子核乾板や水を用いた特別な検出器に照射、精密測定することで、素粒子ニュートリノの新たな謎解明が期待されている。

―担当業務について教えてください。 

 まず、学部1,2年生対象の講義「学問の面白さを知る」や、名古屋大学で最も重要な学術講義として位置付けられている「名古屋大学レクチャー」の運営業務があります。他にも、YLC教員の公募説明会の運営や募集要項の確認と登録、さらに国際交流としてUBIAS分科会のWorking Group Meetingや西オーストラリア高等研究所のOron Catts所長の講演会の開催なども担当しました。また、高等研究院のホームページサーバやメールサーバ、IPアドレス管理などIT関連業務も行っています。

―高等研究院が主催するユニークな講義「学問の面白さを知る」について教えてください。

 高等研究院のミッションとして、「名古屋大学の学内アカデミーとして、優れた研究を名古屋大学の構成員に紹介し、それを共有することで、学術の振興をはかる」というものがあります。このミッションをまさに体現しているのが、この「学問の面白さを知る」です。大学に入って間もない学部1,2年生を対象に、あらゆる研究領域から特に優れた業績を挙げている、名古屋大学を代表する研究者を毎年約15名選んで講義をしていただきます。学問の真の魅力を受講生に伝えることで、高校までの「勉強」とはひと味違う、「研究」のおもしろさに触れてもらいます。この講義シリーズの運営において、講師の選定や講義当日のサポートを担当し、円滑に進行できるよう支援しました。

―杉山直総長をはじめとした名古屋大学所属の著名な研究者に加え、カーボンナノチューブで有名な飯島澄男氏といった名大所縁の学外の有名研究者にも講師を務めていただくなど、豪華講師陣の編成が印象的です。運営の中での大変なことや、魅力について教えてください。

 講師の選定や調整は確かに大変ですが、個人的にはそう思わず、むしろ楽しんでやっています。これまで国際共同研究で代表者やセクションリーダーとして50人から数百人という規模の研究を私自身やってきました。その時の調整やコミュニケーションの経験が、この業務にも生きているかもしれません。何よりも、簡単には招待できないようなご高名な先生方と直接話せる機会はなかなかありません。講義の内容は私にとっても勉強になっています。講義シリーズを通して受講生の皆さんが高い志をもって大学生活を送ってもらえるようになれば嬉しいです。非常に贅沢な講義シリーズなので、ぜひこれからもたくさんの学生に受講してもらいたいです。

亀田 真澄 Masumi KAMEDA

高等研究院(人文社会系担当) 専任教員/准教授
専門:感情史学

 2年間のクロアチア滞在中、激動の時代で何度も国籍が変わった現地住人と接した経験をきっかけに、国への帰属意識形成に影響を与えるプロパガンダの研究を始める。感情の奥深くまでプロパガンダが入り込む様子を解き明かしてきた。現在、感情が宣伝や文化産業によって作られてきた過程を、アメリカとソ連の比較を通して研究を行っている。代表的な著書に、『国家建設のイコノグラフィー-ソ連とユーゴの五カ年計画プロパガンダ』(成文社)、『マス・エンパシーの文化史-アメリカとソ連がつくった共感の時代』(東京大学出版社)がある。

20259月の着任後、中心的な業務を早くも多数任されています。現在の担当業務について教えてください。

 国際的な学術交流の運営を中心に行っています。名古屋大学全体としても注目されている国際連携に、University Based Institute for Advanced Study(略称:UBIAS; 大学附置高等研究院連合)があります。世界中の高等研究院が集まるネットワークで、その数は40を超えます。第一線で活躍する世界中の研究者と交流できるのは自分自身にとっても大きな魅力です。ちなみに、UBIASに所属する研究者は人文社会系の方が多いので、その意味でも私の専門を活かしやすい環境かもしれません。活動例としては、2年に一度、各組織の代表が集まる「Directors’ Meeting」が行われます。ちょうど202511月初旬にガーナ大学が主催していて、榊原院長、河江先生と一緒に参加してきました。

―ガーナ大学のDirectors Meetingについて、印象的だったことを教えてください。

 名前の通り、組織のトップが集まって形式的な承認などが行われる会議かと最初は想像していましたが、学会のようにしっかりプログラムが組まれていることにまず驚きました。AIの活用や学問と国家、政治の関係など、かなり深い話題が盛りだくさんでした。さらに、お互いに前向きな批判精神ですごく熱い議論になる局面もあって、熱気がすごかったですね。皆が意見を言い合える民主的な場所だったのが印象的でした。たとえば、国際会議の共通言語として英語を話すこと一つとってみても、国の支配の歴史であったり、英語が母国語でない国の運営の困難さや参加ハードルの高さであったりと様々な議論になりました。また、全体としてガーナ大学の皆さんのおもてなしも心に残っています。現地ツアーやダンスパーティーなど、ガーナの文化も楽しめました。実際に会ってみると、こういう人が組織を動かしているんだなというのがよくわかるとても大切な機会でした。

―担当業務への思い入れを教えてください。

 私には思想家と呼ばれる人になりたいという夢があります。自分の研究分野を超えて、世の中のこと、現代のことを発信できるような人ですね。そのためにはニュースを読んでいるだけではだめで、自分も利害関係者の一人として関わらないとわからないことがたくさんあると思っています。今の業務は自身の研究にもとても良い影響があると思いますし、もっと広範に現代社会について知りたいなと思っています。

河江 肖剰 Yukinori KAWAE

デジタル人文社会科学研究推進センター 教授
専門:エジプト考古学

 2018年10月から2024年12月まで高等研究院専任教員。2025年1月からは、デジタル人文社会科学研究推進センター教授、兼高等研究院兼任教員。エジプトのギザにあるピラミッドタウンの発掘調査や、ギザ三大ピラミッドの構造解析を始めとした研究を行う。その中でレーザースキャナーやドローン空撮によるピラミッドの三次元計測調査を実現。石一つひとつの形まで解析可能なほどの精密記録を行い、現在解析を進めている。アウトリーチ活動として多数のメディアに出演し、自身のYouTubeチャンネル「河江肖剰の古代エジプト」の登録者数は30万人を超える。

201810月の着任からこれまで高等研究院をリードされてきました。その中での担当業務について教えてください。

 20259月着任の亀田先生に本格的に引き継ぐまで、国際的な学術交流の運営を中心に行ってきました。特にUniversity Based Institute for Advanced Study(略称:UBIAS; 大学附置高等研究院連合)の運営ですね。その他にも人文社会系の担当として、名古屋大学レクチャーや卓越先端次世代研究シンポジウム、オンラインイベントの立上げなどのイベント運営も行ってきました。

UBIASでの活動について特に教えてください。

 名古屋大学高等研究院は2021年から昨年までコーディネーショントリオという、運営委員会の中でも実務を担当する三大学のうちの一つに選ばれていました。たとえば2年に一度、世界中の代表が集まる「Directors’ Meeting」があるのですが、2023年度には名古屋大学で主催しました。各代表との調整や当日の世話人など含めて全面的に担当していたのですが、そのとき参加した研究者に会うと今でも、「Yuki!名古屋大学はとても良かったよ!」と口々に言ってくれるのは嬉しいですね。やっぱり現地開催は大事です。会議の内容はもちろん大切ですが、一緒にご飯を食べたり、日本の文化を紹介したりする中で深いつながりができてきます。国際交流の現場を経験した方にはわかるかもしれませんが、実際こうした交流の具体的なメリットは曖昧なことが多いです。けれど研究と同じで、トライアンドエラーを繰り返すうちにいつか何かが形になることがあります。こうした曖昧さの中で関係性を保つのに、人と人とのつながりが大事になると思います。昨年は名古屋大学と同じくコーディネーショントリオのガーナ大学が主催した会議に、榊原院長と亀田先生にも出席していただいたのですが、特に後任の亀田先生のお人柄含めてUBIASの各国メンバーに対面で引き継げたのはとても大きかったですね。

―あらためて、国際交流の面白さや、今後の高等研究院への期待について教えてください。

 たとえば今、AIが大きなテーマになっていますが、国や文化によって扱いや考え方が全く異なるのは面白いですね。たとえばAIを使用するための予算も国によっては大きな負担になったり、使用した際のデータが他国に流れるのを気にしたり、状況に応じて違ってきます。AIは今後も様々な学際研究に関係してくるので、高等研究院でもぜひ様々な分野や価値観を持つ人たちと議論を重ねていくと良いと思います。